私はフローラです
クラブエスパースに参加する犬に、藤原さんが連れてくるジャックラッセルテリアのフローラがいます。1999年の10月に5か月で入会しました。クラスには年かさのハスキーや黒ラブラドール、コーギーたちがいました。社交的なフローラはお兄さんお姉さん犬に会うのが面白く、毎回張り切ってレッスンをしていました。
活発で歩くときもぐいぐいリードを引っ張る元気者です。体が小さいのに全く気にせずに、体の大きな犬たちの中で負けじと熱心にトレーニングに取り組んでいました。 犬たちの先生である14才のシェパードのイリスやその子供の8才のアスラン、ルーシーが大好きです。クラブに来ると3頭をいち早く見つけて皆の中に一目散に走りこみ、ゴロンとひっくり返りお腹を見せる利口者です。
そのフローラが5月に1才になりました。その時の出来事です。
クラブの中で一番強いのは誰?
レッスン半ばでフローラは水を飲みにバケツの側に行きました。ルーシーはそこで水を飲んでいました。フローラはためらわずにルーシーの側に顔を突っ込んで、バケツから水を飲み始めました。するとルーシーはどいてしまいました。
フローラは意外な出来事に「あらっ!」と思いました。そうして水飲みバケツの隣にいた誰にも恐れられている柴犬チップをグッと睨みつけました。あらあらどうしたことでしょう、チップもどいてしまったのです。
フローラは「案外みんな弱虫なのねぇ!フーちゃん結構強いジャ~ン!」とすっかり自信がつきました。大好きなエスパースのレッスンがますます好きになりました。そこで自分のレッスンが終わったけれど、その日は家に帰りたくありませんでした。フローラのママは次のクラスを見学してもいいと言ったので、彼女はベンチの下にもぐって伏せて休んでいました。
しばらくすると体重が38キロもあるのにスマートな体の大きなアスランが、彼女の側につながれたのです。憧れとちょっと怖かったアスランも、今や強くなったフローラにはたいしたことなく思えました。アスランはレッスンしているラブラドールのナナを熱心に見ていて、フローラが側にいることなど眼中に無いのも彼女は気に入りませんでした。 するとテリアの血が騒ぎ出し、彼女は大きなアスランの肩に小さな手をバシッと置きました。とたんに雷のような大声でアスランが「ガオーッ!」と怒鳴りました。「威張るなッ!チビッ!」と怒ったのです。フローラは目にもとまらぬ速さで飛び退き、アスランと目が合わないように後ろを向いて座りました。
アスランは彼のお母さんのイリスに叱られました。「大人のすることじゃないわよッ。」とでも言うようでした。
フローラは背中を丸めて考えました。「ヤッパだめかぁ~。そりゃあフーちゃんだって、肩に手をかけることは自分を主張したことになる犬の掟は知ってるわよ~。だけど、そんなに怒らなくてもいいじゃないのぉ~。あーびっくりした!」「あ~あ、まだまだ一番にはなれないよね~。」
そんなに一番が好きなのね!犬たちは。