お散歩ママさんイリスに出会う
第1話 出場者
お散歩ママさん | 38才、子供二人の母、専業主婦、当時は犬を飼うのは反対、なぜなら犬の散歩が面倒だから。ところが躾とトレーニングをした犬は散歩が楽しくなると発見。それからは散歩にはまった人 |
キョンキョン | 小学3年生、長女。いつもついてくる大勢のお供の面倒見が良い |
ゴンザレス | 小学1年生、長男。調子の良いマイペース |
イリス | 生後45日にお散歩ママさんの家族になったシェパード犬、メス、成犬になってからはゴンザレスの乳母をかってでる |
リョウ太 | ゴンザレスの同級生。風の又三郎のような自然児。プレーキの無い自転車に乗って走り回っている |
マアくん | ゴンザレスの友人、小学2年生、リンの飼い主。ある日奈良に旅行に行く途中、やぎという駅で「やぎぃ~。やぎぃ~。」と駅の放送があったら「ええ~ん。山羊怖いぃ~。」と泣いた優しい子 |
リン |
マアくんの犬、イリスより1才年下、1才で母になる。柴とビーグル4/1のMIX犬 |
お散歩ママさんイリスに出会う
第2話 イリスに臨むこと
1985年の夏、三重県の四日市市で暮らしていたお散歩ママさんは3日3晩考えてシェパード犬のイリスを飼うと決めました。転勤族の子供たちは仲良しの友達ができても、いつか別れなければならない宿命です。せめて決して別れることが無い友達、犬を飼う必要があると考えたからです。
それにしても縁があって我が家にやってきたシェパードの子犬は、将来怪物のような力持ちになるはずです。そして雨が降っても風が吹いても運動が必要です。だから何かの場合、お散歩ママさんが犬の散歩ができなくても、小学1年のゴンザレスでも散歩をさせられるようにしなければなりません。
お散歩ママさんイリスに出会う
第3話 シェパードという犬は
いったいにシェパードは競争心が強い犬ですが、イリスも例外なく一緒にいるものは人でも犬でも関係なく1歩先に出ないと気がすまない性格らしく常にリードを引っ張って先に出ようとします。
ある時市民ウォークラリーがあり、イリスと子供たちをつれて参加しました。レースはゴール間近になりました。並んで歩いていた人の中で面識が無いおじさんが、早くゴールしようと走り出しました。それを見たイリスは「イリちゃん、絶対に負けないからねッ!」と言わんばかりにおじさんをチラチラ横目で見ながら走ること走ること。イリスのリードを持っていたゴンザレスは引きづられて倒れそうになりました。ゴンザレスは「イリスぅ~、大人には勝てないよッ!」とたしなめると、イリスはとても残念そうでした。
そのような訳でお散歩ママさんはイリスが生後4か月ころから、何とか歩く練習をしなければならないと決心を新たにしました。
お散歩ママさんイリスに出会う
第4話 シェパードという犬は
1985年は犬を訓練する本は本の少ししかありませんでした。読んでもよく解らないし、かかりつけの獣医に相談すると元訓練士で今は引退してヨークシャテリアの繁殖をされている年配の紳士を教えてくださいました。
伺うと彼は快く私の質問にお答えくださいました。そして僅かなお礼も受け取ろうとしませんでした。彼の元には3回通いました。内1回はイリスを連れて行きました。たったそれだけでしたが、4か月後にはイリスは私の左側をリード無しでついて歩けるようになったのです。本当に彼に出会えたことに感謝しています。
そこで彼に言われたことは「犬が人と並んで歩く脚側行進の教え方は、まず人の左の横に犬を座らせるなりして待たせます。それからツケと言いながら人は一歩前に出てリードを軽くひっぱり犬も一歩前に出すのです。」
つまり彼の言うことは「犬はツケと指示を出されたらいつも人の左横に並んでいなければいけないのです。その時人が歩いていようと止まっていようと。」
紳士はそれから基本の大事なことを私の教えてくれました。
「犬に最初に教えなければならない事は、呼ばれたら人の元へすぐに来るようにすることです。二つ目は人の子供にも言えますが、マテと言われて止まらないと車に轢かれてしまいます。犬も同じですよ。それから三つ目は犬を座らせたり伏せをさせたら、ヨシと言い犬に解除の指示を出すまで犬をそのままでいさせることです。犬が座ってもすぐに立ってしまうようでは、お座りや何かができたと言えないのです。」
これらの言葉は20数年経った今でも私は守っています。
お散歩ママさんイリスに出会う
第5話 シェパードという犬は
犬に歩くことを教えるのはとても難しいことです。でもお坐りはたいてい誰にでもできますね。お散歩ママさんがイリスにお座りを教えだしたのは彼女が3か月頃でした。ある日ススキの原っぱに子供たち5~6人を引き連れて出かけました。子供たちとイリスが遊び飽きた頃、彼女は子供たちに向って「オスワリ!」と号令をかけました。子供たちは「いつも号令かけられてるもん!」と思い思いの場所に素早く座りました。そして彼女はイリスのことも、首輪に手をかけお尻を軽く押して座らせました。
この頃イリスはオスワリ、マテ、ヨシでご飯を食べていたので、オスワリという言葉は知っていました。彼女はオスワリと言われると、ゆっくりしかたないというように座っていました。しかし今日ススキが原でお座り遊びをした後は、今までより早く喜んで座るようになりました。
この時もう一つ遊びました。ヨシの合図で子供たちは好きなように走りまわります。マテの号令がかかったら、ただちに止まるゲームです。お散歩ママさんはイリスのリードを持ち、引っ張らないようにして犬と一緒に走り回りました。マテと号令を出した後、イリスのリードを短くして彼女の動きを止めました。イリスは何だか解らなかったのですが、見回すと競い合う相手の腕白小僧たちが全員止まっていたので、すぐにこのゲームを理解しました。そしてリードをつけていなくてもマテと指示を出すと、パタッと止まるようになりました。
大事なことはその後のヨシです。子供たちもイリスも息をひそめてヨシの言葉を待っています。お散歩ママが気迫をこめて大声で「ヨシ!」と号令をかけました。すると待ってましたとばかり、イリスはゴンザレス目がけて飛びかかりました。子供たちは取っ組み合いを始めました。次に「マテ!」と号令をかけると、みごとに全員動きを止めました。パタッと止まった子供たちを見ると、おやおや豚の鼻をしている子、アカンベーをしている子、パンツを脱ぐぞっという素振りをしている子、おそまつくんのイヤミみたいに片足を上げてシェーをしている子、などです。これにはユニークには自信があるお散歩ママさんも想定外の出来事でした。そして子供たちみんなとイリスは、息を凝らして「ヨシ」の大号令を待っているのでした。
お散歩ママさんイリスに出会う
第6話 シェパードという犬は
補足ですが「ヨシ」という「もう、自分勝手に好きにしていいよっ。」の合図があると、子供も犬もリーダーをよく注意して見るようになります。そしてそのゲームは短い(4秒位)方が楽しいです。「マテ、ヨシ」を3回繰り返したら終りにしましょう。「ねえッ、もう一回やりたいよぅ!」というところで「また今度・・・」と止めることが、子供と犬を楽しかった記憶が焼きつけられます。次回わくわくしながらゲームをすることでしょう
犬は生後2~3か月で今のような遊びで教えると、素直に無理なくできるようになります。 犬は生後4か月になると自立心、警戒心の目が出てきます。犬は気乗りしないと、オスワリと指示しても無視することがあります。餌で誘導してもお腹が一杯だと、知らんふりでしょう。叱れば人と何かをすることが嫌いになります。犬の生後2か月3か月は、犬にとってとても大事な時期です。